デマンド管理

はじめに

デマンドグラフ

デマンドグラフ

左図は、ある日のデマンドの状況を棒グラフで表したものです。それぞれの棒はデマンドを、高さは大きさを示しており、棒の数は1日あたり48個(24時間÷30分=48)あります。デマンドとは30分間の消費電力量のことで、デマンドを抑えるとはそれぞれの棒の高さを抑えることです。したがって、30分ごとの管理(1年では48個×365日)を継続的に行うことが必要になります。デマンドの管理を行っていない工場やビルなどでは、棒の高さがどんどん高くなり、その結果無駄な電気代(基本料金)を支払っていることになるのですが、気づいていないケースが以外に多いのではないでしょうか。

<ピーク発生のメカニズム>
電気は生産活動を行うに当たり必要だから使うわけで、一つの工場やビルにおいて様々な場面で相互に意識されることなく使用されます。思わぬ時にあるいは同じようなパターンでピークが発生することがよくあります。

<全負荷の把握>
ピークというのはそれぞれの電気設備が重なって稼働している時に発生します。現在の電気の使用状況がどの程度なのか把握できる環境を整えると、このような状況のもとではこの設備の運転は少し抑制できるなどの判断が可能となります。

<見える化・どこでも化の実現>
中小規模の工場やビルの全体の電力使用状況をつぶさにどこからでもリアルタイムに可視化するような装置は、あるようでありません。そのようなニーズに答えたのが「省エネでまこん(FEMS)」です。

ログイン画面

デマンド監視

デマンド管理画面(省エネでまこん)

デマンド管理画面

・ステップ1(電気使用量の実態把握)
まずは、工場やビルで使用されている全体の電力使用量の計測を行います。計測を行う計器や装置は、精度、分解能、データ記録容量、操作性や視認性などについて管理水準に合ったものを選定してください。
・ステップ2(デマンド目標設定)
電力使用量が把握できる環境が整ったら、最大需要電力の管理目標値を決めます。日常の管理において、デマンドがこの目標値を超えそうになった時、不急設備の停止や空調設備の温度緩和などの対策を行うわけですが、目標値の超過予測や対処は人手では非効率で不安定です。

図は省エネでまこんのデマンド管理画面で、このまま使用するとデマンドが「目標超過」するであろう状況を示したものです。

デマンド監視制御装置(デマンドコントローラーの導入・活用)

最大需要電力の抑制
・デマンド警報発生時に停止する機器のリスト(容量、運転スケジュール、設定値、管理担当者等)を作成します。停止する機器において、例えば停止できない曜日、時間帯、設定値の上下限、最低停止時間など関係者からヒアリングしておくことで、職場環境への悪化や製品品質への影響を未然に防止できます。
・デマンド警報が発生した時には手順に則り対応します。デマンドコントローラー導入初期では、警報発生時には一斉放送などにより伝達し手動で対応するのが良いでしょう。必要に応じ、この結果得られた知見を制御に組み込むとスムーズに自動化へ移行できます。

効果の検証
・手動対応による負荷停止等の作業記録と電力使用量記録データ(30秒データ)との突き合わせや停止した負荷容量を把握します。
・関係者に環境や品質への影響についてヒアリングを行います。
・目標値改善について検討、PDCAを繰り返します。

実際の空調デマンド制御

以下は、ある日の「省エネでまこん」による空調デマンド制御の状況です。

  1. 10時49分(※)、「省エネでまこん」はデマンドが目標超過することを予測(図1 デマンド警報)
  2. 同時に、空調機に対してデマンド信号を出力。空調機コントローラはこの信号を受けて圧縮機の運転を抑制
  3. その結果、消費電力は129kWから104kWへと下がり(図2)、デマンドは目標以下に抑制できた

※省エネでまこんではデマンド制御対象設備容量とデマンド残時間の関係を見て、最適なタイミングで制御を行います。

図1 デマンド警報

 

 

 

図2 消費電力

「図2 消費電力」は、受電端電力量(電力会社からのパルス信号)を30秒間隔で電力換算表示したものです。横軸は時間(30秒)で、縦軸は電力(kW)です。10:49:00には129kWでしたが、デマンド信号により室外機が抑制された結果、10:50:00には104kWまで下がりました。

ポイント
  • デマンド制御対象設備の能力とデマンド残時間の関係を見て最適なタイミングでデマンド制御
  • デマンド制御の状況が記録されるため、後から追跡調査が可能
  • 受電端電力(工場等の全体の電力量)は30秒ごとに記録しているため、ある程度の大きさの負荷の動作状況は把握可能(今回は1分の間に25kW下がったことが確認できた)

なお、室外機は10年以上前に生産されたもので、デマンド制御基板を入手し組み込みました。この制御基板に「省エネでまこん」からデマンド信号(接点信号)を出力します。

図3 デマンド制御基板

kWとkWh

電力と電力量

ある工場で、100kW(電力)のヒータを1時間運転した時の消費電力(電力量)は以下のとおりです。
100[kW]×1[時間]=100[kWh]
参考までに、このときの電力量料金は単価が17[円/kWh] の場合、以下の金額となります。
100[kWh]×17[円/kWh] =1,700円

車との比較

・契約電力:車のエンジン出力に相当

 エンジン出力100PSは電気で言えば契約電力100kW、200PSは契約電力200kWに相当します(100PS=100kWではありません)。エンジン出力は車輌購入時に決め後から変更することはありませんが、電気の場合、電気は見えないため大きな電力を瞬時に使うことがあります。この大きな電力が契約電力となります。
車であればエンジン出力が大きくなればそれなりのメリットを受けることもありますが、電気の場合には、メリットは一切なく契約電力は1年間は見直されないため、過大な料金を支払い続けるペナルティーだけが残ります。
参考までに契約電力100[kW]の場合、基本料金は以下となります。仮に10kW超過すると、毎月12,690円支払いが増え、年間では152,280円となります。
100[kW]×1,269.0[円/kW・月]=126,900円/月
注1)力率は考慮していない
注2)1,269.0[円/kW・月]は東京電力の工場向けの基本料金単価で、他の電力会社では単価が2,000円を超える契約もある

・電力 :速度計に相当
・電力量:走行距離または燃料費に相当

デマンドとエンジン出力

工場等で電気機器を一斉にフル稼働した場合など、瞬間的な消費電力(デマンド)は大きくなるものの、実用上は問題なく生産活動が継続できます。家庭であれば電流リミッターが働き、ブレーカーがトリップしこれ以上電気が使えなくなり、再び電気を使うにはブレーカーを再投入しなければなりません。リミッターの制限を上げればトリップは防げますが、毎月の電気料金(基本料金)は上がってしまいます。
工場等の場合、いきなり停止すると安全面などへの影響があるため停電することはありませんが、過去のデマンドより大きくなればリミッターに相当するもの(契約電力)は自動で引き上げられます。今月の電気料金のうち、基本料金に相当する部分は高くなり、向後1年下がることはないので、電気代は予算オーバーとなること必致です。
家庭でも工場でも共通して言えることは同時に電気を使わないことです。家庭の例で、朝、エアコンがフル運転の状態でお湯を沸かしながら、パンを焼くと経験上30Aは超えてしまいます。したがって、ポットのお湯を沸かした後にパンを焼くことで対応可能です(生活に支障をきたすことはまずない)。工場でも同じ考え方でデマンドを抑制できるケースが多いと想定されます。ただ、工場の場合、停電はしないので瞬時電力を見えるようにしておかなければなりません。
このような計測装置は市販されているのでしょうが、省エネでまこんは現在の電力使用状況をリアルアイムに表示し、保存データの簡単分析機能などにより効率のよい運用を見つけることができるツールです。

最大需要電力について

最大需要電力

  • ある工場において負荷A,B,Cがあったとし、これらの負荷3台を同時に運転(図1 3台×2工程)または任意の2台を同時に運転(図2 2台×3工程)したケースを考えます。ただし、運転する場合、最低でも2台の同時運転が必要とします。2つのケースとも使用したエネルギー量は同じですが、最大需要電力は異なります。最大需要電力が3単位必要な運転(図1)に比べ、最大需要電力が2単位の 運転(図2)がいわゆるデマンド管理の考え方によるもので、基本料金と関係の深い発電設備の能力を2/3に抑えることができます。

    デマンド管理の考え方

    デマンド管理の考え方

     

     

     

     

     

     

     

     

最大需要電力と契約電力の関係

  • 各月の契約電力は、「その月の最大需要電力と前11か月の最大需要電力のうち、いずれか大きい値」となります。
    このルールを下図に適用すると、2015年8月の契約電力は、同年1月の最大需要電力が最も大きかったため、この月の最大需要電力が契約電力となります。参考までに同年7月の契約電力は、前11か月内の2014年8月の最大需要電力が適用されています。contract_power

    一方、2016年2月に注目すると、前11か月と比べて当月の最大需要電力が最も大きかったため、当月の最大需要電力が契約電力として適用されます。以降の1年間の契約電力は、この値を下回ることはありません。
    本例では、2015年8月に発生した最大需要電力が契約電力となり、その後2016年1月まで下がる傾向にありましたが、同年2月に再び上がったケースで、日々の管理が重要であることが認識できます。

    電気料金の仕組み

    電気料金は以下のとおり計算され、使用量に応じた電力量料金のほかに基本料金がかかります。基本料金と電力量料金の比率は右図のとおりで、基本料金は電気料金全体の20%~40%程度を占めており、デマンド管理を行えばこの基本料金を確実に下げることができます。この比率は業種や稼働状況により異なりますが、比率の高いほど効果は上がります。

    demand_cost1

    電気料金の内訳

    電気料金=基本料金+電力量料金
    1)基本料金

    基本料金=契約電力×基本料金単価×(185-力率)÷100

    瞬間的(※)に電気をたくさん使用することで契約電力は上がります。電力供給サイドとしては最大需要に見合った供給設備を確保しなければならないためです。需要サイドとしてはピークシフトやピークカット(節電対策)を行い最大需要電力を抑制すれば基本料金は下がります。
    ただし、契約電力とは、「最大需要電力のうち,その月を含む過去1年間の最も大きな電力(電力会社)」ですので、一度上がった契約電力を下げるには一年かかることになります。

    2)電力量料金

    電力量料金=電力使用量×料金単価

    電力量料金は電力使用量に比例します。発電に必要な燃料コストに相当し、需要サイドとしては機器の効率化や無駄の削除(省エネ対策)により電力使用量は削減できます。

    注)ここでは、燃料費調整額や契約メニューによる電力量単価の違いについては考慮しません。
    ※連続した30分単位の管理

    3)実際の基本料金

    ・基本料金単価: 1,258円/kW~2,020円/kW(単純平均:1,698円/kW)
    ・年間の基本料金(契約電力300kWの場合): 1,698[円/kW]×300[kW]×0.85×12[月]=5,195[千円/年]
    注)基本料金単価は北海道電力から九州電力の工場向け契約における最低と最高の単価。北海道電力や九州電力は他の電力会社に比べ高い傾向にある。本例の場合、契約電力を1kW下げると、電気料金は年間では約17,000円下がる。