2025年2月
インバータを用いてポンプを可変速運転することで、吐出圧力を一定に制御している例を紹介します。
システム概要

- 装置A、装置B、・・・(以下、装置)は使用中は発熱。そのため、ポンプで冷水を循環させて冷却
- 各装置の冷水入口にはバルブ有り。本バルブは装置運転中は開(開閉により管路配管抵抗は変化→圧力変化)
- 図中の圧力計指示値が一定となるようポンプの回転数を自動で制御
- 冷水タンクには補給水や冷却機能等が付いているが省略
解説
ここでは本システムの実測データを用いて、代表的な周波数での運転状況を解説します。
1.実測データ
下図はポンプの電力量(kWh/min)と圧力の時系列グラフ(省エネでまこんリアルタイムデータ 1分間隔で収集)で、朝一の立ち上がりをとらえたもので、見てのとおり異なる周波数で運転されています。

- スタート時は、全バルブが開いた状態で運転。
この時47.5Hzで運転、下表のNo.2のデータに相当 - 次は生産までの待機状態。40Hzで運転、下表のNo.4のデータに相当
- その後、装置稼働(製造開始)。圧力が一定になるようポンプ周波数は自動制御
2.回転数と電力などの関係
代表的な周波数における運転状況を実測データを元に、回転数、電力、実揚程などについて表に整理しました。
・No.2~No.4は実際の運転データで代表的なもの
・No.1は参考データ(n=1で、ポンプ効率が最大となる運転点。ポンプ特性図による)

- ※1 計測値(省エネでまこん)で、※2はこの値をkWに変更(×60)
- ※3 NO.2~4が、一定圧(0.45MPa≒45m)制御のデータ
- ※4 流量は、電力(※2)=9.8×Q×H÷ηより求めた
- ※5 総合効率=ポンプ効率×インバータ効率(0.95)×電動機効率(0.9)
- ※6 ポンプ効率はメーカー提供のポンプ特性曲線より読み取り(n=1の値を適用)
3.運転状況と特性曲線
前述の表データをポンプ特性曲線上にプロットしました。
本システムは圧力一定制御(実揚程45m)であり、それぞれのポンプ曲線と管路抵抗曲線とはこの点(赤色×記号)で交差しています。

- n=1(50Hz) 電力は、
11.6kW≒9.8[m/s2]×0.6[m3]×1,000[kg/m3]÷60[s]×67.6[m]÷0.573÷1,000 - n=0.95(47.5Hz)電力は、
9.6kW≒9.8×0.692×1,000÷60×45÷0.530÷1,000 - n=0.89(44.5Hz)電力は、
7.2kW≒9.8×0.536×1,000÷60×45÷0.547÷1,000 - n=0.8(40Hz)電力は、
4.8kW≒9.8×0.243×1,000÷60×45÷0.376÷1,000
◆◆流量が少ないとポンプ効率悪化◆◆
4.8kWはn=0.95(9.6kW)のときのちょうど半分。
P∝Q・Hなので、
nが0.95→0.8のとき、Q=243/692=0.35
Hは一定なので、理論上Pは3.4kW。
(9.6kW×0.35≒3.4kW)
と計算されるが実測値は4.8kW。
これはポンプ効率が悪化(0.62→0.44)するためで、1.4kWに相当します。
(4.8kWー3.4kW=1.4kW)
注意)・2.以降、単位は省略
・電力、揚程は実測値。流量は実測データ及び効率から逆算
最後に
1.省エネ効果
設備改修前、当該ポンプは直起動で運転、圧力制御は行っていませんでした。
省エネも見据えた改修で圧力一定制御を導入し、その省エネ効果は以下のとおり24%と推定されます。
・改修前 11.6kW≒9.8×0.8×1,000÷60×49÷0.61÷0.9÷1,000
・改修後 8.8kW(実測値の平均)
・削減電力量(1日あたり) 22.4kWh=(11.6kW-8.8kW)×8h
・省エネ率 24%≒(11.6ー8.8)÷11.6×100
注意: 改修後の電力は実測値(平均)。改修前の電力は、揚程は49m、流量800L/minで運転と推定、その時のポンプ効率は0.61, 電動機効率は0.9と仮定。
また、1日の運転時間は8時間とした。
PLCへ圧力を取り込み、圧力一定となるようPLCからインバータへ周波数設定する仕組みは標準的な技術であり、難しくはありませんしトラブルもありません。同様なシステムがある工場は検討されると良いでしょう。
省エネ以外の効果として、圧力一定による安定的な運転やポンプの長寿命化(摩耗抑制、振動抑制)、省人化(保守点検の軽減)なども期待でき、いわゆる生産性向上にもつながるはずです。
2.過大な省エネ効果
ポンプの場合、回転数を落とすと理論上3乗に比例して動力が下がりますが、実機においては回転数を下げるとポンプ効率は下がり、さらにモータ効率も悪化します。
具体的な段階ではこの点に注意しないと計算どおりの省エネ効果が得られないことがあります。
そのような点からも、実測による効果検証は必要でしょう。