ポンプのインバータ運転による省エネ効果(応用編)

2024年6月

はじめに

約6年前、関東地区の金属加工工場でポンプの更新工事を実施しました。この工事では、全てのポンプをインバータ制御に変更し、流量調整を従来のバルブ調整からインバータによる回転数調整に切り替えました。その後、作業効率の向上や省エネルギーの実現に大きく貢献しています。

制御面では、メイン制御に加えてタッチパネルを用いて任意の周波数に変更できる機能や、ポンプの電流や圧力をリアルタイムで確認できるシステムを構築しました。このシステムにより、より効率的な運用が可能となり、工場全体のパフォーマンス向上に寄与しています。
 消費電力等のデータは「省エネでまこん(DEMS)」で自動で記録しています。理由は数年にわたる大量のデータを時系列で保存できることや、再現性やリモート管理などに適しているためです。


さて本題です。当時、次のような省エネ対策を組み込みました。
「昼休みなどポンプは止められない」とのことであり、省エネのために自動で回転数を下げる機能を提案・組み込みました。
6年が経過しその効果がどうであったか、あるポンプ(11kW)について紹介します。

稼働状況

  • 通常時48Hzで運転 休憩時は25Hzに下げる(自動制御)
  • 休憩時間の合計は60分間(1日当たり)
  • 実揚程・流量などポンプ特性は下方の図2を参照

効果

消費電力
・ポンプ回転数を48Hzから25Hzまで下げることで、消費電力は75%も削減できます。
 4.84kW(48Hz)ー1.19kW(25Hz)=3.65kW 3.65kW÷4.84kW=0.75 75%の削減

削減電力量電気代の実績は以下のとおりです。
・1日当たり、(4.84kWー1.19kW)×1時間=3.65kWh (休憩時間=60分/1日)
・年間では、3.65kWh×250日/年=730kWh (年間の運転日数は250日とした)
 したがって、金額は730kWh×20円/kWh=14,600円/年  (単価は20円/kWhとした)
 6年連続なので、730kWh14,600円×6年=87,600円/6年 (2018年1月~2024年1月)
・1日の削減電力量は下図をご覧ください。
 30分のグラフにおいて、午前10時と午後3時の休憩及び昼休みは消費電力量が下がっています。
  5分:0.1kWh/5分=0.1kWh×(60分/5分)≒1.19kWh
  30分:2.42kWh/30分=2.42kWh×(60分/30分)=4.84kW
 

図1 省エネでまこんグラフ抜粋(30分と5分)

特性曲線

図2 ポンプ特性

50Hzのポンプ特性はメーカーのデータシートから作成していますが、48Hz及び25Hzは独自に作成したものです。

ポンプ特性48Hz運転25Hz運転備考
消費電力(実測)4.84kW1.19kW48Hz→25Hzで3.65kW(75%削減)
揚程(圧力より換算)約80m約30m
流量(特性曲線より)約250L/min約130L/min25Hz÷48Hz≒0.52→流量も0.52に半減 流量∝回転数

最後に

・ポンプの流量や圧力を最適化するためには、インバータ制御が極めて有効です。本事例のように応用的な運用方法を見つけることで、インバータ導入の効果をさらに高めることができ、省エネにもつながります。
・PLC内部データを記録に残したい場合にも「省エネでまこん(DEMS)」は使えます。
ただ単にデータを保存するためだけではなく、WEBブラウザから「日・月ごとの自動集計」や「その時の圧力はどうであったか」を再現するなどデータを共有できるため、活用の幅が広がると思います。